JOINT RESEARCH
共同研究

LED TOKYO × 岡山理科大学

可視光通信のデータ送受信手法に関する共同研究

研究背景

可視光通信について

「可視光通信」とは、その名の通り人間の目に見える光(LEDなど)を用いて通信を行う技術です。
特徴としては、照明やディスプレイなどの既存の光源に通信機能を付加可能、光を遮れば通信も遮断されるため、高いセキュリティ性などが挙げられ、今後の無線通信を補完・強化する技術として注目を集めています。
一般的にLEDを点滅させた送信機を、受信機としてカメラ(イメージセンサ)で送信源のLED光とそれ以外の外乱光(雑音)を画像上で分離して送信源の光だけを受信します。
しかし通信速度がカメラの撮影速度に依存してしまい通信速度が低速という課題がありました。

これまでの研究

回転式LED送信機の開発

岡山理科大学 荒井准教授の研究室では、課題を解決するために、LEDを高速で回転させて光の軌跡を「残像(POV)」としてカメラに捉えさせる技術を用いた、プロペラ型回転式LED送信機を開発してきました。

  • LEDを列状に配置し、LEDが回転と同時に点滅することでデータを送信
  • 受信機のカメラがLEDの光の軌跡を残像として1枚の画像に収めることで、一度に多くのデータを受信可能(高速化)

最初に開発した装置は図1のようなLEDが筒状に回転する送信機であり、LEDの位置や回転速度などを工夫することで、従来の方式に比べて通信速度が約60倍に向上することを確認しました [1]。
さらに、[1]を発展させてプロペラ状に回転するプロペラLED送信機も開発し、従来手法の72倍の通信速度向上に成功しました[2]。

(a)
(b)

図1. 回転式LED送信機 [1]:(a)静止状態, (b)回転状態.

さらに実用化に向けた技術の工夫

これまでに、送信機と受信機の位置やタイミングのずれによる克服などシミュレーションと実験を行い、通信技術の向上を行ってきました(参考文献)

共同研究の進捗

本格的なPOVディスプレイを用いた通信実験

LED TOKYOと組んで、今回の研究では、256個のLEDを搭載し1,500回転/分で回転する「3D Phantom 30z」POVディスプレイを用い、さらに高度な通信実験(図2)を実施しました。
本手法では受信機側での送信機の検出を容易にしつつ、非回転時に比べて約3.125倍の通信効率向上が見込まれることが分かりました。
この成果は、国際会議NCSP’25(2025年2月、マレーシア開催)にて論文として報告されました[3]。

今後も荒井准教授とLED TOKYOは、技術改良と実証実験を重ねながら、社会実装に向けた研究開発を加速してまいります。

図2. POVディスプレイとカメラを用いた可視光通信実験の様子

  • [1]  S. Arai, Z. Tang, A. Nakayama, H. Takata, and T. Yendo, “Rotary LED Transmitter for Improving Data Transmission Rate of Image Sensor Communication,” IEEE Photonics Journal, vol. 13, no. 4, pp. 1-11, Aug. 2021.
  • [2]  S. Arai, A. Nakayama, Z. Tang, M. Kinoshita, and T. Yendo, “Development of Propeller-type Rotary LED Proto-transmitter for Underwater Visible Light Communication,” 2023 IEEE International Symposium on Circuits and Systems (ISCAS2023), pp. 1-5, May 2023.
  • [3]  W. Tafusa and S. Arai, “A Study on Improving Communication Speed of Image Sensor Communication Using Persistent of Vision Display,” Proceedings of 2025 RISP International Workshop on Nonlinear Circuits, Communications and Signal Processing, pp. 297-299, Feb./Mar. 2025.

文章(敬称略):LED TOKYO研究室 湯沢、岡山理科大学 荒井